こんにちは。ピアノ学習者のKayoです。今回は、フランツ・リストの「コンソレーション(慰め)第3番 変ニ長調 S.172-3」について、私が実際に練習して学んだことをまとめました。

作曲家: フランツ・リスト(Franz Liszt, 1811-1886)

作曲年: 1849-1850年頃

調性: 変ニ長調

難易度: 中級(ソナチネ〜ソナタ初期程度)

リストというと超絶技巧の作曲家というイメージがありますが、この「コンソレーション第3番」は技巧的というより、美しい旋律と豊かな和声が魅力の作品です。穏やかで瞑想的な雰囲気を持ち、「慰め」というタイトルにふさわしい癒しの音楽として、多くの人に愛されています。

ただし、見た目の優雅さとは裏腹に、実際に弾いてみると予想以上に難しい曲でした。私はこの曲を完成させるまでに半年間を要しました。特に左手と右手のリズムが合わない作りになっている部分、変ニ長調(フラット5個)と臨時記号の多さ、そして右手を歌わせることに本当に苦労しました。

1. 楽譜について〜私が選んだ版

私はこの曲を練習するにあたり、ムジカ・ブダペスト版を使用しました。ハンガリーで出版されているリスト作品の権威ある版で、原典に忠実でありながら、演奏に必要な情報も丁寧に記されていると感じました。

おすすめの版:

  • ムジカ・ブダペスト版: ハンガリーで出版されているリスト作品の権威ある版です。原典性が高く、リストの意図に忠実。(私が使用した版です)
  • 全音ピアノピース: 最も入手しやすく、運指やペダル記号も丁寧に記されています。初めて取り組む方に適しています。
  • ヘンレ版: 原典版として信頼性が高く、リストの意図に忠実な楽譜です。上級者や原典を重視する方に。

版によってペダル記号や強弱記号、運指が異なる場合があります。特にこの曲はペダルの使い方が非常に重要なので、ペダル記号が詳しい版を選ぶことをおすすめします。

可能であれば楽器店で実際に見比べて、自分が読みやすいものを選ぶとよいでしょう。ムジカ・ブダペスト版は原典性を重視する方に特におすすめですが、入手がやや難しい場合もあるので、その場合は全音ピアノピースやヘンレ版も良い選択です。

2. 作曲家フランツ・リストについて

フランツ・リストは1811年、ハンガリー(当時はオーストリア帝国)のライディングに生まれました。幼少期から天才的なピアノの才能を発揮し、9歳で公開演奏会デビューを果たしました。

リストは19世紀最高のピアニストとして知られ、圧倒的な技巧と表現力で聴衆を魅了しました。作曲家としても多作で、ピアノ独奏曲、管弦楽曲、宗教音楽など、幅広いジャンルで作品を残しています。

リストの作品は超絶技巧を要するものが多いことで有名ですが、一方で「愛の夢」や「コンソレーション」など、美しく抒情的な作品も数多く作曲しています。これらの作品は、リストの内面的な深さと、単なる技巧家ではない音楽家としての側面を示しています。

晩年はワイマール、ローマ、ブダペストを行き来しながら、後進の指導と作曲に専念し、1886年に75歳で亡くなりました。

3. 曲の成り立ち・背景

「コンソレーション(慰め)」は全6曲からなる曲集で、1849年から1850年にかけて作曲されました。タイトルはフランスの詩人サント=ブーヴの詩集『慰め』(Consolations)に由来しています。

この時期、リストは公開演奏活動から引退し、ワイマールで宮廷楽長として活動していました。華やかな演奏旅行の日々から落ち着いた生活へと移行する中で、内省的で瞑想的な作品を多く生み出しました。

第3番は6曲の中で最も有名で、演奏される機会も多い作品です。穏やかで優美な旋律、豊かな和声進行、そして効果的なペダルの使用が特徴です。「慰め」というタイトルが示すように、聴く人の心を穏やかに包み込むような、癒しの音楽となっています。

リストらしい技巧的な華やかさはありませんが、その代わりに深い情感と詩的な美しさが際立っています。この曲は、リストが単なる技巧家ではなく、深い音楽性を持った作曲家であることを示す重要な作品の一つです。

4. 楽曲分析〜曲の構造を理解する

形式: 自由な形式

実際に半年間練習してみて、私はこの曲に「形式という形式がない」と感じました。古典的な三部形式のような明確な区分けではなく、詩的で即興的な流れを持つ、自由な構造の作品だと思います。

リストの抒情的な作品は、厳格な形式に縛られるのではなく、音楽が自然に流れていくように作曲されています。この曲も、決まった型にはめるよりも、一つの物語や感情の流れとして捉えた方が理解しやすいでしょう。

冒頭部分(変ニ長調): 右手が美しく流麗な旋律を奏で、左手が分散和音の伴奏を刻みます。

右手は最初、単音から始まり、徐々にオクターブになっていきます。さらに音数も少しずつ増えていくため、音楽が広がっていく感覚を味わえます。この広がり方が、この曲の魅力の一つです。最初は静かに、そして徐々に豊かになっていく。まるで朝の光が少しずつ広がっていくような、あるいは心が開かれていくような感覚です。

左手の分散和音は、モヤのかかっているようなハーフタッチで弾くことで、幻想的で柔らかい響きを生み出します。ペダルと相まって、非常に豊かな音色を作ります。

旋律は優雅に歌い上げられます。和声は変ニ長調を中心に、色彩豊かな和音が次々と現れ、リストならではの豊かな和声感覚を感じさせます。

特徴的なのは、右手の旋律が3度の重音で弾かれる箇所があり、音に厚みと温かさを与えていることです。

この曲の最大の特徴は、左手と右手のリズムが合わない作りになっている部分があることです。左手は規則的な分散和音を刻んでいますが、右手のメロディは自由に歌うため、リズムが完全には一致しません。これは高度なポリリズム(複合リズム)の技術で、私が最も苦労したポイントでした。

中間部分(複雑な転調): この中間部分が、私が譜読みで最も苦労した箇所です。

調性がどんどん転調していきます。ヘ短調(f moll)→ヘ長調(F dur)→イ短調(a moll)→イ長調(A dur)と次々と変わっていくのです。しかも基本的な調性が変ニ長調(Des dur、フラット5個)なので、これらの転調にはたくさんの臨時記号がつきます。

ナチュラル記号やシャープ記号が頻繁に現れ、フラット5個の調性の中でこれらを正確に読むのは本当に大変でした。一つでも臨時記号を見落とすと、全く違う音になってしまいます。

調性が変わるたびに雰囲気も変化します。短調から長調へ、また短調へ、そしてまた長調へ。この目まぐるしい転調が、心の中の様々な感情を表現しているようです。冒頭の穏やかさとは対照的に、より複雑で、陰りのある、そして時には明るさも感じさせる、深い情感を表現します。

私はこの部分の転調と雰囲気の変化を表現するのに、そして何より正確に譜読みをするのに本当に苦労しました。第2〜3ヶ月の譜読み期間のほとんどは、この中間部分の臨時記号との格闘でした。

この部分では和声がより複雑になり、半音階的な進行も見られます。徐々に高揚していき、クライマックスへと向かいます。そして徐々に静まっていきます。

再び変ニ長調へ: 再び変ニ長調に戻りますが、今度は装飾や変化が加わっています。右手の旋律はより装飾的になり、左手の伴奏パターンも少し変化します。

最初よりも豊かで、感情が深まった印象を受けます。そして静かに、穏やかに曲を閉じていきます。

曲全体の流れ: この曲は、形式に当てはめるよりも、一つの詩や物語として捉えた方が理解しやすいと思います。穏やかな長調から始まり、複雑な転調を経て、再び長調へと戻る。その流れは、「慰め」というタイトルにふさわしい、心を癒す音楽の旅を表現しています。

冒頭の単音からオクターブへ、そして音数が増えていくという広がり方は、まさに慰めが少しずつ心に広がっていく様子を表しているようです。そして中間部分の複雑な転調は、心の中の様々な感情を巡る旅のようです。

厳密な繰り返しや対称性よりも、自然な感情の流れと変化を大切にする。それがこの曲の本質だと、私は感じました。

5. 演奏のポイント〜私が学んだこと

基本的なテクニック

左手の分散和音(ハーフタッチ): この曲の最も重要な要素の一つが、左手の分散和音です。この伴奏はモヤのかかっているようなハーフタッチで弾くことで、幻想的で柔らかい響きを作り出します。

ハーフタッチとは、鍵盤を底まで押し切らず、浅めのタッチで弾くことです。これにより、音が柔らかく霞んだような、繊細な響きになります。

私が特に気をつけたのは、音の粒を揃えること、そして柔らかく流れるように弾くことでした。機械的にならないよう、手首を柔軟に使い、自然な流れを意識しました。

【練習方法】

  1. 左手だけをゆっくりと、音の粒を揃えて練習する
  2. 各音が均等な音量になるように意識する
  3. 鍵盤を底まで押し切らず、浅めのタッチ(ハーフタッチ)で弾く練習をする
  4. 手首を柔軟に使い、腕全体の動きで弾く
  5. ペダルと組み合わせて、モヤのかかったような幻想的な響きを作る練習をする

右手のメロディライン: 右手のメロディは「歌う」ように弾くことが最も重要です。フレーズの流れを大切にし、自然な呼吸を感じさせる演奏を目指しましょう。

私が最も苦労したのは、この右手を歌わせることでした。左手の規則的なリズムに対して、右手は自由に歌う必要があるため、両手のバランスを取りながら右手をメロディとして際立たせるのは、想像以上に難しいことでした。

また、3度の重音を美しく響かせることも困難でした。2つの音のバランスを取りながら、柔らかく温かい音色を出す必要があります。

フレーズの頂点に向かってクレッシェンドし、そこから自然にデクレッシェンドする「山型」の表現を意識しました。

【練習のコツ】

  1. 重音は上の音(高い方)を少し強めに弾くと、メロディラインが聴こえやすい
  2. 指の力だけでなく、腕の重みを使って音を出す
  3. レガートを意識し、音と音をつなぐ
  4. フレーズごとに息継ぎのポイントを決める
  5. 右手だけを取り出して、十分に「歌う」練習をする

ペダリング: この曲ではペダルが非常に重要な役割を果たします。豊かな響きを作り出すため、ペダルは多めに使いますが、音が濁らないように注意が必要です。

私は最初、ペダルを使いすぎて音が混濁してしまいました。録音して聴き直すことで、適切なペダリングのタイミングがわかるようになりました。

【ペダリングのコツ】

  1. 基本的には和声が変わるタイミングで踏み替える
  2. しかし、響きの連続性を重視して、少し多めに使う
  3. 耳でよく聴きながら、濁らない範囲でペダルを保持する
  4. 特にクライマックスでは、ペダルを効果的に使って豊かな響きを作る

テンポとルバート: 楽譜には”Lento placido”(ゆっくりと穏やかに)と書かれています。機械的なテンポではなく、自然な歌を感じさせるテンポ設定が重要です。

リストの作品では、ルバート(テンポの微妙な揺れ)が不可欠です。フレーズの流れに合わせて、自然にテンポを揺らすことで、より表情豊かな演奏になります。

よくつまずくポイントと私の対策

左手と右手のリズムが合わない部分(ポリリズム): この曲で私が最も苦労したのが、左手と右手のリズムが合わない作りになっている部分です。左手は規則的な分散和音を刻み続けますが、右手のメロディは自由に歌うため、リズムが完全には一致しません。

特に最初の1ヶ月は、**左手と右手の2小節を合わせるだけで終わってしまいました。**毎日練習しても、両手がバラバラになってしまい、本当に心が折れそうになりました。

【私が実践した練習方法】

  1. まず左手だけを完璧に体に染み込ませる(目を閉じても弾けるくらいに)
  2. 次に右手だけを、歌うように練習する
  3. 両手を合わせる時は、最初は右手のリズムを無視して、左手に合わせて機械的に弾く
  4. 徐々に右手を「歌わせる」ことを意識し、左手のリズムから少しずつずらしていく
  5. 最初はごく遅いテンポで、2小節ずつ練習する
  6. 何度も何度も繰り返し、体に覚え込ませる
  7. 録音して、両手のバランスを確認する

この練習には本当に時間がかかりました。焦らず、少しずつ進めることが大切です。

変ニ長調(フラット5個)と臨時記号の多さ: この曲は変ニ長調で書かれており、フラット(♭)が5個もあります。さらに臨時記号も非常に多く、譜読みに相当な時間がかかりました。

私は第2ヶ月と第3ヶ月の2ヶ月間を、ほとんど譜読みに費やしました。黒鍵が多いため、指が慣れるまでに時間がかかり、臨時記号を見落としてしまうことも頻繁にありました。

【私の練習方法】

  1. 最初は本当にゆっくり、1小節ずつ正確に譜読みをする
  2. フラットの位置を体に覚え込ませる(特に黒鍵の位置)
  3. 臨時記号に印をつけて、見落とさないようにする
  4. 4小節ごとに区切って、完璧に弾けるまで繰り返す
  5. 変ニ長調のスケールとアルペジオを毎日練習して、調性に慣れる

譜読みは本当に根気が必要でした。焦らず、正確さを最優先にすることが重要です。

リストらしい細かい音符・装飾音: リストの作品特有の細かい音符や装飾音も、この曲の難しさの一つです。これらを滑らかに、そして自然に弾くのは大変でした。

【練習方法】

  1. 装飾音の部分だけを取り出して、ごく遅いテンポで練習する
  2. 徐々にテンポを上げていく
  3. 装飾音は軽やかに、しかし丁寧に弾く
  4. メロディの流れを妨げないように注意する

右手の3度重音のバランス: 右手の3度の重音を、均等に、そして美しく響かせるのは本当に難しいポイントです。特に高い方の音を大きく出すというバランスが、想像以上に困難でした。

【練習方法】

  1. 重音を片方ずつ弾いて、それぞれの声部を確認する
  2. 両音を同時に弾くときは、高い方の音(上の音)を意識的に強めに弾く
  3. 最初は大げさなくらい高い音を強調して、徐々にバランスを調整する
  4. 指の力だけでなく、腕の重みと手首の角度を工夫する
  5. 柔らかいタッチを保ち、硬くならないように
  6. 録音して、メロディラインが聴こえているか確認する

このバランスを取るのに、何ヶ月もかかりました。少しずつ、感覚を掴んでいく必要があります。

左手の広い跳躍と分散和音: 左手は広い音域にわたる分散和音を弾き続けます。手が小さい場合、届かない箇所もあるかもしれません。

【私が実践した練習方法】

  1. 左手だけを、ごく遅いテンポで練習する
  2. 跳躍の距離を手の感覚で覚える
  3. 腕全体を使って、滑らかに移動する
  4. どうしても届かない場合は、アルペジオ的に弾くか、音を省略する
  5. ペダルを使って音をつなぐ
  6. ハーフタッチで柔らかく弾くことを意識する

右手と左手のバランス: 右手のメロディを歌わせつつ、左手の分散和音を控えめに保つバランスが重要です。特に左手は動きが多いため、大きくなりがちです。

【私の練習方法】

  1. 右手のメロディだけを十分に練習して、歌い方を体に覚え込ませる
  2. 左手の分散和音を、かなり小さめの音量で練習する
  3. 両手を合わせるときは、常に右手のメロディが聴こえるように意識する
  4. 録音して客観的に聴き、バランスを確認する

中間部分の情感表現: 中間部分では音域が広がり、和声も複雑になります。この部分の陰りと深さを表現するのが難しいポイントでした。

【練習方法】

  1. 中間部分だけを取り出して、ゆっくりと練習する
  2. 和声の変化を理解し、それに合わせて音色を変える
  3. 短調の部分では、音色を少し暗く、内省的に
  4. クライマックスに向けて徐々に高揚感を出す

テンポの流れとルバート: 左手の分散和音を一定のテンポで保ちながら、右手でルバートをかけるのは高度な技術です。

【私が実践した練習方法】

  1. まずメトロノームを使って、安定したテンポで弾く
  2. テンポが体に染み込んだら、徐々にルバートを加えていく
  3. ルバートをかけても、音楽の流れが途切れないように
  4. 自分の演奏を録音して、テンポの揺れを客観的に確認する

6. 段階的な練習方法〜私の練習スケジュール

この曲を完成させるまでに、私は半年間(6ヶ月)を要しました。見た目は優雅で美しい曲ですが、実際に弾いてみると予想以上に難しく、焦らず時間をかけて取り組む必要がある作品だと実感しました。

第1ヶ月: 左手と右手を合わせる基礎練習

この最初の1ヶ月は、左手と右手の2小節を合わせるだけで終わってしまいました。

左手と右手のリズムが合わない作りになっているため、両手を合わせることが本当に難しく、毎日練習しても思うように進みませんでした。心が折れそうになることも何度もありましたが、諦めずに続けました。

この時期、私はプロのピアニストの音源をよく聴いていました。

特に気に入ったのが、ネルソン・フレイレ(Nelson Freire, 1944-2021)の演奏です。ブラジル出身の偉大なピアニストで、リストやショパンの抒情的な作品の演奏で知られています。

フレイレさんの演奏は、技巧を誇示するのではなく、音楽そのものの美しさを自然に歌い上げるスタイルで、この「コンソレーション第3番」の演奏も本当に素晴らしいです。左手の分散和音が柔らかく霧のように響き、右手のメロディは心から歌っているように聴こえます。ルバートの使い方も自然で、まさにこの曲が求める「慰め」の表現を体現していると感じました。

練習に行き詰まったときは、フレイレさんの演奏を聴いて、「こんな風に弾けるようになりたい」と目標を持つことができました。

【第1ヶ月に実践したこと】

  1. 左手だけを、目を閉じても弾けるくらいに完璧に練習する
  2. 左手のハーフタッチを体に染み込ませる
  3. 右手だけを、歌うように練習する
  4. 最初の2小節だけを、両手で合わせる練習を繰り返す
  5. ごく遅いテンポで、正確に合わせることを最優先にする
  6. 毎日少しずつ進める(焦らない)
  7. プロの演奏(特にネルソン・フレイレ)を聴いて、目指すべき表現を学ぶ

【私が気をつけたポイント】

  • この段階では「正確さ」を最優先にする
  • 両手が合わないことに焦らず、少しずつ進める
  • 1日の練習で2小節しか進まなくても、それで良しとする
  • 毎日コツコツ続けることが大切
  • プロの演奏を聴いて、理想の音色やフレージングをイメージする

第2〜3ヶ月: 譜読みに集中(2ヶ月間)

第2ヶ月と第3ヶ月の2ヶ月間は、ほとんど譜読みに費やしました。

変ニ長調(フラット5個)と臨時記号の多さに本当に苦労しました。黒鍵の位置を覚え、臨時記号を見落とさないようにするだけで、相当な時間がかかりました。

この時期も、ネルソン・フレイレさんの演奏を繰り返し聴いていました。特に中間部分の複雑な転調(f moll→F dur→a moll→A dur)がどのように表現されているのか、フレイレさんの演奏から多くを学びました。彼の演奏を聴くことで、「ああ、ここはこんな風に雰囲気が変わるんだ」「この転調はこんなに美しいんだ」と、譜読みのモチベーションを保つことができました。

譜読みは地道で孤独な作業ですが、完成形の美しい演奏を聴くことで、「この苦労の先には、こんなに素晴らしい音楽が待っているんだ」と思えたことが、諦めずに続けられた理由の一つです。

【第2〜3ヶ月に実践したこと】

  1. 4小節ごとに区切って、完璧に譜読みをする
  2. フラットの位置を体に覚え込ませる
  3. 臨時記号に印をつけて、絶対に見落とさないようにする
  4. 変ニ長調のスケールとアルペジオを毎日練習する
  5. ごく遅いテンポで、正確に弾くことを優先する
  6. 運指を早めに決定し、常に同じ運指で練習する
  7. ネルソン・フレイレなど、プロの演奏を聴いて、曲全体の流れと表現を理解する

【私が気をつけたポイント】

  • 正確な譜読みを最優先にする
  • 速く弾こうとしない
  • 臨時記号を絶対に見落とさない
  • 焦らず、4小節ずつ確実に進める
  • 調性に慣れるため、毎日スケール練習をする
  • プロの演奏を聴いて、完成形をイメージし続ける

ネルソン・フレイレについて: ネルソン・フレイレ(1944-2021)は、ブラジル出身の世界的なピアニストです。幼少期から天才的な才能を発揮し、12歳でリオデジャネイロ交響楽団と共演してデビューしました。

フレイレさんの演奏の特徴は、技巧を誇示するのではなく、音楽そのものの美しさを自然に表現することです。特にショパン、リスト、ブラームスなどのロマン派作品の演奏で高く評価されていました。

彼の演奏は、驚くほど自然で、まるで音楽が自然に流れ出てくるような印象を受けます。力みがなく、柔らかく温かい音色が特徴です。ルバートの使い方も絶妙で、決して大げさにならず、しかし深い情感を感じさせます。

「コンソレーション第3番」の演奏も、フレイレさんならではの繊細さと温かさが際立っています。左手のハーフタッチによる柔らかい伴奏、右手の自然な歌い方、そして中間部分の複雑な転調での色彩感。すべてが完璧なバランスで調和しています。

私がこの曲を練習する上で、フレイレさんの演奏は大きな指針となりました。YouTubeなどで聴くことができるので、ぜひ一度聴いてみてください。きっとこの曲の魅力を再発見できると思います。

第4ヶ月: セクション連結

第4ヶ月になってやっと、セクション同士をつなげる練習ができるようになりました。

  1. 隣接するセクション同士をつなげて弾く
  2. セクションの境目がスムーズになるよう、特に練習する
  3. 曲の各部分を通して弾けるようにする
  4. 各部分の性格の違いを意識する

【私が気をつけたポイント】

  • セクションのつなぎ目で止まらないよう注意
  • 各部分の調性や雰囲気の違いを音色で表現し始める
  • テンポの安定性を意識する
  • ペダルの使い方を研究する
  • 右手を歌わせることを意識する
  • 左手のハーフタッチを保つ

第5ヶ月: 通し練習と表現

第5ヶ月になって、ようやく曲全体を通して弾く練習ができるようになりました。

  1. 曲全体を通して弾く練習を始める
  2. 途中で止まってしまっても、可能な限り弾き続ける練習をする
  3. 表現記号(強弱、テンポの変化など)を丁寧に守る
  4. 自分なりのルバートを加えていく

【私が気をつけたポイント】

  • 完璧を目指すより、音楽の流れを大切にする
  • 録音して客観的に聴く
  • リストの他の抒情的な作品(愛の夢など)も聴いて、スタイルを研究する
  • 人前で弾く機会を作る

第6ヶ月: 仕上げ

最後の1ヶ月は仕上げの段階です。

  1. 細部の表現を磨く
  2. 暗譜に挑戦する(推奨)
  3. 本番を想定した練習をする
  4. 最後まで弾き切る集中力を養う
  5. 弾きあい会で演奏する機会を重ねる

【私が気をつけたポイント】

  • 一度の練習で何度も通す(スタミナをつける)
  • 本番の服装で弾いてみる
  • 本番の環境に近い状況で練習する
  • 弾きあい会で定期的に演奏する

弾きあい会の重要性: 私はこの仕上げ段階で、月に2回、どこかで開催される弾きあい会に申し込んで参加していました。一人で練習している時と、人前で弾く時では、緊張感が全く違います。

【弾きあい会での経験】

  • 月に2回程度、他のピアノ学習者の前で演奏
  • 他の参加者の演奏を聴くことで、表現の参考にする
  • 演奏後のフィードバックをもらう
  • 毎回少しずつ改善点を見つける

弾きあい会で演奏を重ねることで、以下のようなことを学びました:

  • 緊張した状態でも演奏し続ける集中力
  • ミスをしても止まらずに弾き続ける力
  • 人に聴かせることを意識した表現
  • 本番特有の緊張感への対応
  • 穏やかで瞑想的な雰囲気を保つ技術

特に、この曲は「慰め」というタイトルの通り、聴く人の心を癒す音楽です。人前で弾くことで初めて、この曲の本当の魅力が見えてきました。一人で練習している時は技術的なことばかり気にしていましたが、聴衆がいることで、「どう聴こえるか」「どんな気持ちを伝えられるか」を意識するようになり、表現が格段に豊かになりました。

また、他の学習者の演奏を聴くことで、「こんな風にペダルを使うんだ」「このフレーズはこう歌うのか」など、新しい発見も多くありました。同じリスト作品を弾いている人がいれば、お互いに情報交換をすることもでき、とても勉強になりました。

日々の練習の組み立て方:

  • ウォームアップ(5〜10分): スケール(特に変ニ長調)、アルペジオ、ハノンなど
  • 部分練習(15〜20分): 難しい箇所を集中的に
  • 通し練習(10〜15分): 曲全体の流れを確認
  • クールダウン(5分): ゆっくりと、表現を意識しながら

私は毎日30〜40分程度の練習を続けました。長時間一度に練習するよりも、短時間でも毎日続ける方が効果的だと実感しました。特にこの曲は、繊細なタッチやペダリング、そして左右の手のリズムの違いを体に染み込ませる必要があるので、毎日ピアノに触れることで感覚が養われます。

半年間の練習を振り返って: この曲は見た目以上に難しく、半年間という長い時間がかかりました。特に最初の3ヶ月は、左手と右手を合わせることと譜読みだけで終わってしまい、何度も心が折れそうになりました。

しかし、ネルソン・フレイレさんのような素晴らしいピアニストの演奏を聴きながら、焦らず少しずつ進めることで、最終的には美しく弾けるようになりました。時間はかかりましたが、その分、この曲への愛着も深まりました。

もしこの曲に挑戦する方がいたら、ぜひ焦らず、時間をかけて取り組んでください。そして、プロのピアニストの演奏をたくさん聴いてください。特にネルソン・フレイレさんの演奏は、この曲の理想的な表現を学ぶ上で、本当に参考になります。難しい曲ですが、完成したときの喜びは格別です。

7. 表現のヒント

この曲のタイトル「コンソレーション(慰め)」から、どんな場面を想像しますか?私は練習する中で、この曲に様々なイメージを見出しました。

冒頭(変ニ長調)は、穏やかで優美な雰囲気です。静かな湖畔、あるいは月明かりの下を歩いているような、平和で安らかな気分を表現しましょう。

音色は柔らかく、温かく。タッチは繊細に保ち、決して硬くならないように気をつけました。左手の分散和音は、モヤのかかっているようなハーフタッチで、静かに揺れ動くイメージで弾きました。まるで霧の中を歩いているような、幻想的な雰囲気を作ることを意識しました。

右手のメロディは、誰かが優しく語りかけてくるような、あるいは慰めの言葉をかけてくれるような、温かさを持って歌います。オクターブは2つの声が寄り添うように、調和して響かせることを意識しました。特に高い方の音を少し強めに出すことで、メロディラインが際立ちます。

中間部分(複雑な転調)は、雰囲気が大きく変わります。より深い、内省的な気分になります。心の中の様々な感情が次々と現れては消えていくような、複雑で深い情感を表現します。

この部分では音色を少し暗く、しかし決して重くならないように気をつけました。冒頭との対比を出しつつ、全体の穏やかな雰囲気は保ちます。

転調のたびに表情を変えていきます。短調では少し陰りを、長調では明るさを感じさせます。この目まぐるしい転調を表現することで、心の中を巡る様々な感情を描き出します。

クライマックスに向かう箇所では、感情が高まりますが、それでも品格を保ち、決して激しくなりすぎないように注意しました。そして徐々に静まっていきます。

再び変ニ長調への部分では、最初よりも深い慰めを感じさせるように演奏しました。中間部分で経験した深い情感を経て、より確信に満ちた、温かな慰めを表現します。

そして最後は、静かに、穏やかに曲を閉じます。まるで優しく抱きしめるような、あるいは「大丈夫だよ」と囁くような、温かな終わり方です。

全体を通して、聴く人の心を癒し、慰めることを意識しましょう。急激な感情の変化よりも、穏やかで包み込むような表現が大切です。技巧を誇示するのではなく、音楽そのものの美しさを伝えることを目指しましょう。

▲動画でも解説していますので、宜しければご確認ください

8. まとめ

リストの「コンソレーション第3番」は、技術的には中級レベルとされていますが、実際に弾いてみると予想以上に難しい作品でした。私は完成までに半年間を要し、特に左手と右手のリズムが合わない部分、変ニ長調(フラット5個)と臨時記号の多さ、右手を歌わせること、3度重音のバランス、そして左手のハーフタッチに本当に苦労しました。

最初の1ヶ月は2小節を合わせるだけで終わり、第2〜3ヶ月は譜読みだけに費やしました。しかし、焦らず少しずつ進めることで、最終的には美しく弾けるようになりました。

この曲を通して学んだこと:

  • 美しいメロディの歌わせ方
  • 左手の分散和音のハーフタッチでの扱い方
  • ポリリズム(左右のリズムが合わない)の練習方法
  • 変ニ長調(フラット5個)への慣れ方
  • 複雑な転調(f moll→F dur→a moll→A dur)の理解
  • 3度重音のバランス(高い音を強く出す)
  • ペダリングの重要性
  • ルバートの使い方
  • 自由な形式の曲の捉え方

練習のポイントまとめ:

  • 左手と右手のリズムが合わない部分は、時間をかけて丁寧に練習する
  • 左手はモヤのかかっているようなハーフタッチで弾く
  • 変ニ長調のスケール練習を毎日行う
  • 右手を歌わせることを最優先にする
  • 3度重音は高い方の音を強く出す
  • 譜読みを正確に(臨時記号に注意)
  • ペダルを効果的に使う
  • ルバートで表情をつける
  • 焦らず、半年くらいの時間をかけて取り組む
  • 録音して客観的に聴く
  • 弾きあい会などで人前演奏の経験を積む
  • プロの演奏(特にネルソン・フレイレ)を参考にする

この曲に挑戦する方へ: この曲は見た目以上に難しく、時間がかかります。特に最初の数ヶ月は、思うように進まず挫折しそうになるかもしれません。私も何度も心が折れそうになりました。

しかし、焦らず少しずつ進めることで、必ず弾けるようになります。半年、あるいはそれ以上の時間をかけても良いので、ぜひ諦めずに取り組んでください。完成したときの喜びは格別ですし、この曲を通して得られる技術と音楽性は、他の作品にも必ず役立ちます。

この記事が、「コンソレーション第3番」に挑戦する皆さん、そしてリスト作品に初めて挑戦する皆さんの参考になれば幸いです。時間はかかりますが、素晴らしい曲なので、ぜひ諦めずに取り組んでください。