【ピアノ中級】ランゲ『花の歌』難易度・弾き方・練習方法を徹底解説
こんにちは。ピアノ学習者のKayoです。今回は、グスタフ・ランゲの「花の歌 Op.39」について、私が実際に練習して学んだことをまとめました。
作曲家: グスタフ・ランゲ(Gustav Lange, 1830-1889)
作曲年: 1876年頃
調性: ヘ長調
難易度: 中級(ブルグミュラー25の練習曲終了〜ソナチネ程度)
「花の歌」は発表会の定番曲として知られていますが、実際に弾いてみると、技術的にも音楽的にも学ぶことが多い作品でした。甘く優雅なメロディと、華やかでありながら無理のない伴奏パターンが特徴で、「ピアノで歌う」ことの喜びを実感できる一曲です。
1. 楽譜について〜私が選んだ版
私はこの曲を練習するにあたり、全音ピアノピースを使用しました。最も入手しやすく、運指も比較的丁寧に記されているため、初めて取り組む方にも適していると感じました。
おすすめの版:
- 全音ピアノピース: 最も入手しやすく、運指も比較的丁寧に記されています。初めて取り組む方に適しています。(私が使用した版です)
- ドレミ楽譜出版社 ピアノ名曲110選 グレードB
- ヤマハ ピアノの先生1000人が選んだ 発表会で弾く名曲30
版による大きな違いはありませんが、ペダル記号や強弱記号の細かさが異なります。可能であれば楽器店で実際に見比べて、自分が読みやすいものを選ぶとよいでしょう。
IMSLP(国際楽譜ライブラリープロジェクト)でも原典に近い楽譜を無料で入手できますが、運指やペダル記号がないため、初学者には出版譜をおすすめします。
2. 作曲家グスタフ・ランゲについて
グスタフ・ランゲは1830年、ドイツのシュヴェリーンに生まれたピアニスト・作曲家です。ベルリンでピアノと作曲を学び、その後ピアニストとして活動しながら、主にサロン音楽や小品を数多く作曲しました。
19世紀後半のヨーロッパでは、市民階級の家庭にピアノが普及し、家庭で演奏を楽しむ文化が花開いた時代でした。ランゲはそうした需要に応える形で、技術的には手の届く範囲でありながら音楽的に美しく、聴き映えのする作品を次々と発表しました。
「花の歌」を作曲した1870年代、ランゲは40代半ばで円熟期を迎えており、サロン音楽作曲家として確固たる地位を築いていました。
3. 曲の成り立ち・背景
「花の歌」の正式な献呈先や作曲の具体的なきっかけについては記録が残っていませんが、当時のサロン音楽の文脈を考えると、その背景が見えてきます。
19世紀後半、花は女性らしさ、優雅さ、自然の美しさの象徴として、芸術作品の題材として頻繁に用いられました。絵画では印象派の画家たちが花を描き、文学では花言葉が流行し、音楽でもシューマンの「花の曲」やチャイコフスキーの「四季」など、花をテーマにした作品が数多く生まれています。
ランゲの「花の歌」も、そうした時代の美意識を反映した作品です。技術的な困難さよりも、美しい旋律を歌い上げることに重点が置かれており、家庭の音楽会で演奏することを想定して書かれたと考えられます。
4. 楽曲分析〜曲の構造を理解する
形式: ロンド形式(A-B-A-C-A)
実際に弾いてみて、ロンド形式の構造がとてもわかりやすいと感じました。主題が何度も戻ってくるので、練習もしやすく、聴き手にも親しみやすい構成になっています。
A部分(ヘ長調): 主題 優雅に揺れる8分音符の伴奏に乗って、右手が歌謡的な旋律を奏でます。和声は基本的にⅠ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰという古典的な進行ですが、所々にⅡやⅥの和音を織り交ぜることで、柔らかな色彩感を出しています。
メロディは4小節+4小節の対句構造で、最初のフレーズが問いかけ、次のフレーズが答える形になっています。特に印象的なのは、旋律が高音へと駆け上がる瞬間の開放感です。
B部分(ニ短調): 第一エピソード 短調に転じることで、雰囲気が一変します。ヘ長調の明るく優雅な主題とは対照的に、少し物憂げで内省的な表情を見せます。この短調への転調が、曲全体に深みと陰影を与えています。
私はこの部分の雰囲気の変化を表現するのに苦労しました。音色を変えること、タッチを変えることで、長調とは違う世界を作り出す必要があります。
A部分(ヘ長調): 主題の再現 主題が戻り、安心感をもたらします。ロンド形式の特徴である「戻ってくる喜び」を感じさせる瞬間です。短調から長調への転換により、明るさが一層際立ちます。
C部分(変ロ長調): 第二エピソード 下属調(変ロ長調)に転調し、また違った色彩感を見せます。ヘ長調よりも柔らかく、少し夢見るような雰囲気になります。左手の伴奏パターンもやや動きが増え、音楽に変化を与えます。
A部分(ヘ長調): 主題の最終再現 主題が最後にもう一度戻ってきます。今度は装飾が加わったり、より華やかな印象になることもあります。最後は主和音の分散和音で優雅に曲を閉じます。
ロンド形式(A-B-A-C-A)は、親しみやすい主題が何度も戻ってくることで、聴き手に安心感と統一感を与えます。ヘ長調→ニ短調→ヘ長調→変ロ長調→ヘ長調という調性の流れは、明から暗へ、そしてまた明へという情緒の変化を巧みに表現しています。
5. 演奏のポイント〜私が学んだこと
基本的なテクニック
左手の伴奏: この曲で最も重要だと感じたのは、左手の8分音符の伴奏を均一かつ柔らかく弾くことです。機械的にならないよう、手首を柔軟に使い、わずかに波打つような動きを意識しましょう。
私が特に気をつけたのは、跳躍がある箇所で腕全体を使って滑らかに移動することでした。最初は跳躍のたびに音がバラバラになってしまいましたが、ゆっくり練習することで改善できました。
【練習方法】
- 左手だけをゆっくりと、音の粒を揃えて練習する
- メトロノームを使って均等なリズムを身につける
- 慣れてきたら自然な「揺れ」を加えていく
右手のメロディライン: メロディは「歌う」ように弾くことが求められます。フレーズの頂点(最高音)に向かってクレッシェンドし、そこから自然に音量を落とす「山型」の表現を意識しましょう。
私が苦労したのは、高音へ跳躍する箇所で音が硬くならないようにすることでした。指の力だけでなく、腕の重みを使って音を出すイメージを持つと、柔らかく豊かな音色が得られることを学びました。
調性の変化を表現する: ヘ長調からニ短調へ、そして変ロ長調へと転調する際、それぞれの調性の色を出すことが重要です。ニ短調の部分では音色を少し暗く、内省的に。変ロ長調では柔らかく、夢見るように。そして主題がヘ長調で戻ってくる時は、「帰ってきた」という安心感を表現しましょう。
ペダリング: ペダルは和声が変わるタイミングで踏み替えます。基本的には1小節ごと、または2拍ごとに踏み替えると良いでしょう。ただし、ペダルを踏みっぱなしにすると音が濁るため、耳でよく聴きながら調整することが大切です。
私は最初、ペダルを使いすぎて音が濁ってしまいました。録音して聴き直すことで、適切なペダリングのタイミングがわかるようになりました。
テンポとルバート: 楽譜には”Moderato”(中くらいの速さ)と書かれていますが、機械的なテンポよりも、自然な「歌」を感じさせるテンポ設定が重要です。フレーズの終わりでわずかにリタルダンドをかけたり、クライマックスに向けて少しテンポを上げたりといった、微妙なテンポの揺れ(ルバート)が、この曲に命を吹き込みます。
よくつまずくポイントと私の対策
跳躍の処理: 右手・左手ともに跳躍が多い曲です。特に左手の低音から高音への跳躍では、目で鍵盤の位置を確認する余裕がないことが多いため、手の感覚で距離を覚えることが重要です。
【私が実践した練習方法】
- まず跳躍の前後の音を、目で見ながらゆっくり何度も弾く
- 徐々に目を閉じて、手の感覚だけで弾く練習をする
- 跳躍の瞬間に手首や腕を柔らかく保ち、力まないようにする
- 跳躍先の音を「迎えに行く」のではなく、「そこに置く」イメージで
装飾音符の弾き方: この曲には前打音(装飾音符)が随所に現れます。装飾音符は、主要な音の直前に素早く弾く音で、リズムの中に組み込まれるべきものです。
【弾き方のコツ】
- 装飾音符は拍の前に弾く(前打音)
- できるだけ軽く、素早く弾く
- 装飾音符のあとの主要な音にアクセントが来るように
- 最初はゆっくり練習し、装飾音符と主要な音の関係を理解する
私は最初、装飾音符を拍の中に入れてしまい、リズムがもたついていました。先生に指摘されて直すことができました。
左手の跳躍と音の粒の均一性: 左手の8分音符の伴奏は、一見簡単そうですが、音の粒を揃えながら跳躍をこなすのは意外と難しいものです。特に疲れてくると、音の粒が不均一になりがちです。
【私の練習方法】
- 左手だけを、ごく遅いテンポで練習する
- 各音の音量が均一になるよう、耳でよく聴く
- 跳躍の箇所では、腕全体を使って移動する(指だけで弾かない)
- 手首を柔らかく保ち、力を抜く
右手の跳躍とレガート: 右手のメロディには、音程の跳躍がありながらレガートで弾くことが求められる箇所があります。これは物理的に指をつなげられないため、ペダルと指の離し方で「レガートに聴こえる」ように工夫する必要があります。
【練習方法】
- ペダルを使って音をつなぐ
- 前の音を離す直前に次の音を弾く(わずかに重ねる)
- 指を鍵盤から離すときは、そっと離す(突然離さない)
- 腕の動きで音をつなぐイメージを持つ
テンポキープの難しさ: 左手の規則的な8分音符の伴奏に対して、右手は歌うように自由に弾きたくなるため、テンポが不安定になりがちです。特にルバートをかけた後、元のテンポに戻すのが難しいポイントでした。
【私が実践した練習方法】
- まずメトロノームを使って、厳格にテンポを守って弾く
- 徐々にルバートを加えていく
- 自分の演奏を録音して、テンポの揺れを客観的に確認する
- 「戻るべきテンポ」を体に覚え込ませる
6. 段階的な練習方法〜私の練習スケジュール
第1段階: 部分練習(1〜2週間)
- 曲を4〜8小節ごとの小さなセクションに分ける
- 各セクションを片手ずつ、ゆっくりと練習する
- 特に難しい箇所(跳躍、装飾音符など)は、さらに細かく分けて反復練習
- 片手ずつがスムーズに弾けるようになったら、両手を合わせる
【私が気をつけたポイント】
- この段階では「正確さ」を最優先にする
- 運指を早めに決定し、常に同じ運指で練習する
- 焦らず、一つのセクションが完璧になってから次へ進む
第2段階: セクション連結(2〜3週間)
- 隣接するセクション同士をつなげて弾く
- セクションの境目がスムーズになるよう、特に練習する
- A部分、B部分、C部分それぞれを通して弾けるようにする
- 各部分の性格の違いを意識する
【私が気をつけたポイント】
- セクションのつなぎ目で止まらないよう注意
- 各部分の調性の違いを音色で表現し始める
- テンポの安定性を意識する
第3段階: 通し練習と表現(3〜4週間)
- 曲全体を通して弾く練習を始める
- 途中で止まってしまっても、可能な限り弾き続ける練習をする
- 表現記号(強弱、テンポの変化など)を丁寧に守る
- 自分なりの解釈を加えていく
【私が気をつけたポイント】
- 完璧を目指すより、音楽の流れを大切にする
- 録音して客観的に聴く
- 人前で弾く機会を作る
第4段階: 仕上げ(1〜2週間)
- 細部の表現を磨く
- 暗譜に挑戦する(楽譜を見ながらでも可)
- 本番を想定した練習をする
- 最後まで弾き切る集中力を養う
- 弾きあい会で演奏する機会を重ねる
【私が気をつけたポイント】
- 一度の練習で何度も通す(スタミナをつける)
- 本番の服装で弾いてみる
- 本番の環境に近い状況で練習する
- 弾きあい会で定期的に演奏する
弾きあい会の重要性: 私はこの仕上げ段階で、月に2回、どこかで開催される弾きあい会に申し込んで参加していました。一人で練習している時と、人前で弾く時では、緊張感が全く違います。
【弾きあい会での経験】
- 月に2回程度、他のピアノ学習者の前で演奏
- 他の参加者の演奏を聴くことで、表現の参考にする
- 演奏後のフィードバックをもらう
- 毎回少しずつ改善点を見つける
弾きあい会で演奏を重ねることで、以下のようなことを学びました:
- 緊張した状態でも演奏し続ける集中力
- ミスをしても止まらずに弾き続ける力
- 人に聴かせることを意識した表現
- 本番特有の緊張感への対応
特に、途中でミスをしても止まらずに最後まで弾き切る練習は、弾きあい会を重ねることでしか身につきませんでした。一人で練習している時は、ミスをするとすぐに止まって弾き直してしまいがちですが、本番ではそれができないので、この経験は非常に貴重でした。
また、他の学習者の演奏を聴くことで、「こういう表現もあるんだ」「このテンポ感が素敵」など、新しい発見も多くありました。同じ曲を弾いている人がいれば、お互いに情報交換をすることもでき、とても勉強になりました。
日々の練習の組み立て方:
- ウォームアップ(5〜10分): スケール、アルペジオなど
- 部分練習(15〜20分): 難しい箇所を集中的に
- 通し練習(10〜15分): 曲全体の流れを確認
- クールダウン(5分): ゆっくりと、表現を意識しながら
私は毎日30〜40分程度の練習を続けました。長時間一度に練習するよりも、短時間でも毎日続ける方が効果的だと実感しました。
7. 表現のヒント
この曲のタイトル「花の歌」から、私はバラやスミレなど、様々な花を想像しました。演奏者によって自由にイメージしてよいのですが、一貫したイメージを持つことで、表現に説得力が生まれます。
A部分(ヘ長調)は、優雅で穏やかな雰囲気です。春の庭に咲く花々、あるいは窓辺に飾られた花束を眺めているような、静かな喜びを表現しましょう。力みすぎず、柔らかなタッチで。
B部分(ニ短調)は、雰囲気が一転します。花の影の部分、あるいは曇り空の下で見る花のような、少し物憂げな表情を出しましょう。しかしこれは悲しみというよりも、優しい哀愁です。音色を少し暗くし、内省的に。
C部分(変ロ長調)は、少し夢見るような、あるいは回想的な気分になります。過去の美しい記憶を思い出すような、ノスタルジックな雰囲気を出すとよいでしょう。音色も柔らかく、優しく。
そして最後にA部分が戻ってくる時は、最初よりも確信に満ちた、あるいは喜びに満ちた気持ちで演奏します。「やはりこの花が一番美しい」と再確認するような、温かな感情を込めて。
全体を通して、急激な感情の変化よりも、穏やかで優美な雰囲気を保つことが大切です。聴き手を驚かせるのではなく、心地よく包み込むような演奏を目指しましょう。
8. まとめ
グスタフ・ランゲの「花の歌」は、技術的には中級レベルでありながら、音楽的に深い表現が求められる作品です。美しいメロディを歌わせること、左手の伴奏を均一に保つこと、調性の変化を表現すること、適切なペダリング、そして全体を通した優雅な雰囲気作り。これらの要素は、ピアノ演奏の基礎として非常に重要であり、この曲を通して学ぶことは、より高度なレパートリーへの確かな土台となりました。
ロンド形式という親しみやすい構造の中で、ヘ長調、ニ短調、変ロ長調という異なる調性を経験できるのも、この曲の大きな魅力です。
練習のポイントまとめ:
- 段階的に、焦らず進める
- 部分練習を丁寧に
- 難所は反復練習で確実に
- 表現は徐々に加えていく
- 録音して客観的に聴く
- 弾きあい会などで人前演奏の経験を積む
この曲を通して、「ピアノで歌う」喜びを存分に味わうことができました。焦らず、一歩ずつ進んでいけば、必ず美しい演奏ができるようになります。
私の演奏動画について
私もピアノ学習者として、この曲に挑戦し、YouTubeに演奏動画をアップロードしています。まだまだ完璧ではありませんが、同じようにこの曲を練習している方の参考になれば嬉しいです。
プロのピアニストの演奏と比べると、技術的にも表現的にも至らない点が多々ありますが、学習者ならではの視点で、この曲の魅力をお伝えできればと思っています。
様々な演奏を聴き比べて、テンポ感や表現の違いを研究するのも良い勉強になります。また、自分の演奏を録音して客観的に聴くことも、上達の大きな助けになります。
この記事が、「花の歌」に挑戦する皆さんの参考になれば幸いです。

